多次元ガウス分布の定義式

 多次元ガウス分布は、次の式で定義される確率分布です。

\[ \mathcal{N}(\mathbf{x} | \boldsymbol{\mu}, \boldsymbol{\Sigma}) = \frac{ 1 }{ (2 \pi)^{\frac{D}{2}} |\boldsymbol{\Sigma}|^{\frac{1}{2}} } \exp \left\{ - \frac{1}{2} (\mathbf{x} - \boldsymbol{\mu})^{\top} \boldsymbol{\Sigma}^{-1} (\mathbf{x} - \boldsymbol{\mu}) \right\} \]

 \(D\)は次元数です。ここでは、2次元のグラフで表現するため\(D = 2\)とします。
 \(D = 2\)のとき、確率変数の値\(\mathbf{x}\)、平均ベクトル\(\boldsymbol{\mu}\)、分散共分散行列\(\boldsymbol{\Sigma}\)は、次の形状になります。

\[ \mathbf{x} = (x_1, x_2) ,\ \boldsymbol{\mu} = (\mu_1, \mu_2) ,\ \boldsymbol{\Sigma} = \begin{pmatrix} \sigma_1^2 & \sigma_{1,2} \\ \sigma_{2,1} & \sigma_2^2 \end{pmatrix} \]

 \(\sigma_1^2\)\(x_1\)の分散、\(\sigma_2^2\)\(x_2\)の分散、\(\sigma_{1,2} = \sigma_{2,1}\)\(x_1, x_2\)の共分散です。\(\sigma_1^2 > 0, \sigma_2^2 > 0\)を満たす必要があります。
 この2次元ガウス分布のグラフを作成します。

利用パッケージ

 利用するパッケージを読み込みます。

# パッケージの読み込み
library(tidyverse)
library(mvnfast)

 mvnfastは、多次元ガウス分布に関するパッケージです。

格子点の作成

 等高線図を描画するのに格子状の点を利用します。作図の前に、格子点の作成方法を確認します。

 seq()で、x軸とy軸の値を作成します。

# x軸の値を作成
x_vals <- seq(from = 1, to = 5, by = 1)

# y軸の値を作成
y_vals <- seq(from = 11, to = 15, by = 1)
x_vals; y_vals
## [1] 1 2 3 4 5
## [1] 11 12 13 14 15

 seq()は、第1引数(from)から第2引数(to)までの値を第3引数(by)に指定した間隔で作成します。
 x軸の値をx_vals、y軸の値をy_valsとします。

 作成した値をデータフレームに格納します。

# 値をデータフレームに格納
x_vals_df <- tibble::tibble(
  x = x_vals, # x軸の値
  y = y_vals  # y軸の値
)
head(x_vals_df)
## # A tibble: 5 x 2
##       x     y
##   <dbl> <dbl>
## 1     1    11
## 2     2    12
## 3     3    13
## 4     4    14
## 5     5    15

 ggplot2パッケージで作図するには、作図に用いる値をデータフレームにしておく必要があります。

 散布図を作成して値を確認します。

# 散布図を作成
ggplot() + 
  geom_point(data = x_vals_df, mapping = aes(x = x, y = y)) + # 散布図
  scale_x_continuous(breaks = x_vals) + # x軸目盛
  scale_y_continuous(breaks = y_vals) + # y軸目盛
  labs(title = "seq()")

 geom_point()で散布図を作成できます。

 expand.grid()で、格子点を作成します。

# 格子点を作成
x_grid_df <- expand.grid(
  x = x_vals, # x軸の値
  y = y_vals  # y軸の値
)
head(x_grid_df); tail(x_grid_df)
##   x  y
## 1 1 11
## 2 2 11
## 3 3 11
## 4 4 11
## 5 5 11
## 6 1 12
##    x  y
## 20 5 14
## 21 1 15
## 22 2 15
## 23 3 15
## 24 4 15
## 25 5 15

 expand.grid()は、引数に指定した値を使って、全ての組み合わせを持つデータフレームを作成します。引数に列名 = 値として指定します。
 各行が1つの点に対応します。「x_valsの要素数」掛ける「y_valsの要素数」個の点(組み合わせ)ができます。2つのベクトルの要素数が同じである必要はありません。

 作成した点を確認します。

# 散布図を作成
ggplot() + 
  geom_point(data = x_grid_df, mapping = aes(x = x, y = y)) + # 散布図
  scale_x_continuous(breaks = x_vals) + # x軸目盛
  scale_y_continuous(breaks = y_vals) + # y軸目盛
  labs(title = "expand.grid()") # ラベル

 x_vals, y_valsの全ての組み合わせになっているのを確認できます。

2次元ガウス分布の作図

 格子点の確認ができたので、2次元ガウス分布のグラフを作成します。

分布の設定と計算

 作図に利用する\(\mathbf{x} = (x_1, x_2)\)の値を作成します。

# xの値を作成
x_vals <- seq(from = -5, to = 5, length.out = 51)

# xの点を作成
x_points <- expand.grid(x1 = x_vals, x2 = x_vals) %>% 
  as.matrix()
head(x_points)
##        x1 x2
## [1,] -5.0 -5
## [2,] -4.8 -5
## [3,] -4.6 -5
## [4,] -4.4 -5
## [5,] -4.2 -5
## [6,] -4.0 -5

 seq()\(x_1, x_2\)の値を作成して、x_valsとします。等高線が粗い(点の数が少ない)場合や処理が重い(点の数が多い)場合は、この設定を調整してください。
 expand.grid()\(\mathbf{x}\)の値(組み合わせ)を作成して、x_pointsとします。ただし、確率密度の計算時ために、as.matrix()でデータフレームからマトリクスに変換しておきます。

 平均ベクトル\(\boldsymbol{\mu}\)と分散共分散行列\(\boldsymbol{\Sigma}\)を作成します。

# 平均ベクトルを指定
mu_d <- c(0, 0)

# 分散共分散行列を指定
sigma_dd <- matrix(c(1, 0, 0, 1), nrow = 2, ncol = 2)

 \(\boldsymbol{\mu}\)の値を指定してmu_dとします。
 \(\boldsymbol{\Sigma}\)の値を指定してsigma_ddとします。matrix()\((\sigma_1^2, \sigma_{2,1}, \sigma_{1,2}, \sigma_2^2)\)の順に値を指定します。

 設定したパラメータを使って確率密度を計算します。

# 2次元ガウス分布を計算
dens_df <- tibble(
  x1 = x_points[, 1], # x軸の値
  x2 = x_points[, 2], # y軸の値
  density = mvnfast::dmvn(X = x_points, mu = mu_d, sigma = sigma_dd) # 確率密度
)
head(dens_df)
## # A tibble: 6 x 3
##      x1    x2  density
##   <dbl> <dbl>    <dbl>
## 1  -5      -5 2.21e-12
## 2  -4.8    -5 5.89e-12
## 3  -4.6    -5 1.51e-11
## 4  -4.4    -5 3.71e-11
## 5  -4.2    -5 8.76e-11
## 6  -4      -5 1.99e-10

 mvnfastパッケージのdmvn()で多次元ガウス分布の確率密度を計算できます。変数の引数Xx_points、平均ベクトルの引数mumu_d、分散共分散行列の引数sigmasigma_ddを指定します。
 \(x_1, x_2\)の値と、対応する確率密度(計算結果)をデータフレームに格納します。

分布の作図

 まずは、散布図で確認します。

# 散布図を作成
ggplot() + 
  geom_point(data = dens_df, mapping = aes(x = x1, y = x2, color = density, alpha = density)) + # 散布図
  labs(title = "geom_point()") # ラベル

 色の引数colordensity列を指定すると、点ごとに確率密度に応じた色が付きます。
 透過度の引数alphaにも指定して、点ごとに濃淡を変更します。

 では、等高線図を作成しましょう。

# 等高線図を作成
ggplot() + 
  geom_contour(data = dens_df, mapping = aes(x = x1, y = x2, z = density, color = ..level..)) + # 等高線図
  labs(title = "geom_contour()") # ラベル

 geom_contour()で等高線図を描画できます。
 z軸の引数zに確率密度(density列)を指定します。
 等高線の色の引数color..level..を指定すると、z引数の値に応じて色付けされます。

 先ほどの散布図に関して、確率密度が同じ点を線で結んだイメージです。

 最後に、色々装飾を施します。

# 2次元ガウス分布を作図
ggplot() + 
  geom_contour(data = dens_df, mapping = aes(x = x1, y = x2, z = density, color = ..level..)) + # 等高線図
  coord_equal() + # アスペクト比
  labs(title = "Multivariate Gaussian Distribution", 
       subtitle = paste0("mu=(", paste(mu_d, collapse = ", "), ")", 
                         ", lambda=(", paste(sigma_dd, collapse = ", "), ")"), 
       x = expression(x[1]), y = expression(x[2]), 
       color = "density") # ラベル

 Enjoy!